第七章

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予想もしていなかったこの状況に、当然の如く私の心拍数は急上昇する。 さっきまで冷えていたはずの耳も顔も全てが熱を持つ。 「どうだ?少しは風よけになってるか?」 抱きしめられたまま歩く私の心臓はありえないほどドキドキしていて、心臓が今にも口から飛び出しそう。 そんな状況の私は、無言のまま(うんうん)って感じで頷き仁さんの問いに答える。 身体を抱き寄せられたままでの砂浜の散歩。 足元の不安定な砂浜で相手と歩調を合わせながら歩く。 これが緊張しているせいもあってか、なかなか難しい。 砂に足をとられて何度もよろける私。 その私を支えようとして、仁さんの腕に何度も力が入る。 ちゃんと歩かなきゃ… それにしても… みんなどうやって歩いてるのかな? 身体を密着させながら歩くカップルを時々見かけるけど、見てて歩きづらそうには見えない。 とりあえず、全神経を足元に集中して… なんてことを思っていたら、 「菜々、俺の腰に腕を回してごらん、その方が歩きやすいから」 仁さんからアドバイスを頂いた。 腕を回すって… ちょっと恥ずかしいけど… っていうか… 確か前にも似たような場面が… その時もあまり上手くできなかったような気がするけど… 頭の中でいろんなことを考えてしまう。 だけど、今のこの状況では、 「そっそれじゃ…しっ失礼します」 素直にアドバイスに従うしかない。 仁さんの身体に腕を回すと身体と身体がさらに密着して隙間がうまり、さっきよりも仁さんの温もりを身体に感じる。
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