第一章

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吉田菜々(よしだなな)現在二十三歳。 浮かれ楽しむはずだったクリスマスイブ当日にフラれた私は、降り続ける雪を見ながら途方に暮れている。 姉も私も実家暮らし。 彼氏と別れ、出かける予定がなくなった姉は、同じように予定のない友人達を家に呼び、家でクリスマスパーティーをやるんだと三日前から宣言していた。 そして姉は、 (菜々もイブに出かける予定がないなら、パーティーに参加していいからね) 私にもそう声をかけていた。 姉は、何も知らない。 付き合ってることを姉には言わないで欲しいと創さんから頼まれていたから、姉には何も言ってない。 だから姉は、私と創さんが付き合っていたことを知らない。 当然別れたことも。 そんなわけだから、帰れば普通にパーティーに参加させられる。 創さんは姉の友達だから呼ばれているだろうし、帰れば顔を合わせることになる。 創さんに会いたくない。 姉の菜摘にも会いたくない。 そう思う私の足は、駅とは違う方向へと向かって歩き出す。
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