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着信音がした方へと視線を向けると、胸ポケットから携帯を取り出している男性が視界に入った。
一つ席を空けた隣の椅子に座っているその男性は、横顔からもイケメンだと解るぐらいに鼻筋の通った彫の深い顔をしている。
「…あぁ。……えっ!?」
見た目三十歳ぐらいだろうか?
その彼の眉間にシワが寄った。
「…来れないって…なにかあったのか?」
この感じからして、ドタキャンの電話みたいだ。
電話の相手は彼女さんなのだろうか?
「…明日にすることはできないのか?…そうか。…わかった。…それじゃまた今度ということで…」
会話は終了し、男性は電話を切った。
携帯を握りしめたまま、その男性は深い溜息を吐く。
額に手をあてた彼の姿は、誰が見ても落胆しているように見える。
浮かれていた気持ちから一転しての落ち込み。
男性の落ち込む気持ちが、今日の私には痛いほどよく解る。
他人事じゃないような気がした。
”なんとかしてあげたい”
いつもの私なら、そう思うだけで何もしない。
でも今日の私は、ドタキャンされて落ち込んでいるその彼に自分自身を重ねてしまい、
「あの……もしよろしければ、ドタキャンされた者同士、一緒に飲みませんか?」
その男性に声をかけていた。
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