第一章

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”ロングアイランド・アイスティー”四杯目に突入した。 お酒に関しては、強くもなく弱くもなく。 そう思っていたけれど、アルコール度数高めのカクテルを三杯飲んでも全然酔えない私は、 もしかしたら私って、思っていたよりもお酒は強い方なのかもしれない… なんてことを思いながらゴクゴクとカクテルを飲む。 そんな私に、 「ヤケ酒なら、家に帰ってから飲め。ここで酔い潰れられでもしたら店にとってはいい迷惑だ」 先ほどの男性が咎めるような言葉を言ってきた。 ヤケ酒だと言われれば、その通りだから否定できない。 それに… 酔っぱらいたいと思って飲んでるわけだから、店の中で潰れる可能性もあるしお店の人に迷惑をかける可能性もある。 彼の言っていることは正しくて、間違ってはいない。 だけど… 「家に帰って飲めるぐらいなら、カップルの中に混じって惨めな思いしながらお酒なんか飲まないわよ!家に帰れないから…帰りたくても帰れないからここでお酒を…」 事情も知らない人にあれこれ言われたくない。 そう思う私は彼を睨みつけながら言い返す。 悔しいのか悲しのか解らないけど、胸の奥からグッと込み上げてくるものがある。 我慢していた涙が溢れ出そうになる。 泣きたくない私は目に力を込める。 目の奥なのか?鼻の奥なのか? もうどこが痛いのかさえも解らないけど、ツンとした痛みに耐えながらも泣くのを我慢する私がいる。
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