ごめんください

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

ごめんください

窓を見ると、空に白い斑点がぽつぽつと現れては消えていった。私の住む街は暖かいほうだから、雪なんてあまり見たこともないし積もりもしない。きっとこの雪も積もらず消えるだろう。  そんな雪の日の夜、何をするでもなく、ただ炬燵で夜更かしをするだけの私は、半纏とカイロでも冷え込む背中を丸めていた。  籠のみかんに手を伸ばしかけたそのとき、窓の方でコツコツ、と音が鳴った。なんだろう、こんな夜中に。と思って窓を見ると、窓枠にこんもりと雪が積もっていた。いや、あれは雪じゃない。よく見るとつぶらで小さな目に横長のくちばしがついている。鳥だ。その鳥は、じっと私を見つめていた。  私はベッド脇の本棚から鳥類図鑑を取り出し、ぱらぱらとめくった。?───それらしき鳥を見つけた。名前はシマエナガ、というらしい。そして― 「生息地は、北海道……?」  おかしい。ここは北海道じゃないぞ。ならどうして、ここにシマエナガが…?  また、コツコツと窓ガラスが鳴る。どうやらこの子がつついているようだ。  「入れて欲しいの?」  うん、と言うようにまたコツコツと鳴る。私はそっと窓に歩み寄った。全く逃げる気配を見せずにただ雪を積もらせて待つその子を、極力驚かせないように、窓の鍵を開けた。その子が通れるくらいの隙間を開けると、嬉しそうに跳ねながら入ってきた。ふるふる、と積もった雪を振り落とす。近くで見ると、横一直線に並んだ目とくちばしのせいか、ものすごくかわいい。ふわふわとした真っ白な羽毛といい、まるでぬいぐるみのようだ。  「みかん食べる?」  私が皮をむきながら話しかけると、その子は頷いた(ように見えた)。みかんの房をそっと前に置くと、嬉しそうについばみはじめる。さて、私もみかんを、と思って、もう籠にみかんがないことに気づいた。実家から届いた箱にまだ入っていたはずだ。  寒い廊下を小走りで抜けて、玄関先にあるダンボールからみかんをひとつ手に取って暖かい部屋へと向かう。  「よし、一緒に食べよ……あれ?」  あの子がいない。みかんの房は残らず綺麗に無くなっている。それと一緒にあの子も綺麗にいなくなっていた。ふと、机の上に目をやると、雪が少しだけ、砂糖をひとさじ盛ったように積もっていた。  隙間風が吹き抜けた。もう寝たら?とあの子が言っているのかもしれない。私はこたつやエアコン、部屋の電気を消し、布団に入
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!