最後の晩餐

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最後の晩餐

 おいっ! いい加減にしねぇとそろそろマジで殴り殺すぞ!  サイコパスは、店内の雰囲気と香りに耽っている。  久しぶりに地元に帰ってきて、学生時代に通っていたうどん屋に足を運んだ。  相変わらずコシが強くてのどごしがよく、鰹の香り広がる出汁もうまい。揚げたて熱々の海老の天ぷらがプリプリと踊っている。  サッと振りかけた七味の香りが食欲を掻き立て、鶏肉の淡白な味が絶妙に絡み合う。  ゆっくりと懐かしき思い出の味に浸りながら、特別美味しいこのうどんを食す。  そうしたいと思っていた。  贅沢な願いじゃないはずだ。  だけどそんな俺のささやかな思いを打ち砕くように、クソガキがうるさく騒いで邪魔をする。  ガキが騒いでいる座敷から少し離れたカウンターで俺は食べているが、それでもうるせぇガキの声が癇に障る。  マジで殺してぇ……!  殺してぇと言っても、ガキのことを殺してぇわけじゃねぇぞ。  俺が殺してぇのは、座敷を走り回るガキを注意しねぇで澄ました顔して飯食ってるあの親だ。  分別のつかねぇガキが騒ぐのは百歩譲って仕方のねぇことだ。  だが、そのガキを叱ることなく、しつけができねぇ親は許せねぇ!  テメェがテメェのガキに礼儀や常識を教えねぇで誰がそれを教えてやるんだ!  あのバカ親に限ったことじゃねぇが、今の時代、他人が人のガキを注意するだけであーだこーだ文句をつける親が増えて苛立ちを覚える。  だったら人に注意されねぇようにしっかりしつけとけって話だろ!  いいか、よく覚えとけよ。注意する方は間違っちゃいねぇんだからな!  子供に嫌われたくねぇとか自由を尊重してやりてぇとか言ってテメェのガキを注意できねぇバカ親、それを『良い親』とは呼ばねぇからな!  ダメなことはダメってしっかり言える親にならなきゃダメなんだぞ! 分かるか……!  サイコパスは、ズルズルといい音を立てて麺をすする。  まぁとりあえず、お前みたいなバカ親は痛い目見ないと分からねぇと思うんだわ。  だからその美味しいうどんを食べ終わったら表出ろ。  しつけのなってねぇガキの前で、殴り殺してやる!  早く食べ終わらせろ、それがお前の最後の晩餐だ。  サイコパスは、汁をグイッと飲み干した。
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