バス停の怪

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 小さいころから、何もかもあけっぴろげに接してきたのが今まで続いてきたというタチだ。そのせいか、朋幸は千夏にすっかり押され気味。小さいころから千夏の我儘で肝試しやお化け屋敷に連れて行かされてきた朋幸は、ついにはオカルト関係の調査をしたいという理由で新聞部に入部した千夏に引き入れられてしまったのだ。  今日もその調査に付き合わされることになったのだが、同じ新聞部である以上なまじ断りにくく、結果この土砂降りの中バス停にいるわけだ。 「今日は、幽霊が出るという噂の霊園の裏山に行くの」 「あー、あれ持ってきた? 飴玉の入った袋」 「持ってきたけど、何に使うんだ?」 「そこに出る幽霊だけどさ、飴玉の入った袋を持ってると、それを置いてけ~、置いてけ~って後ろから呼び止めてくるの」  ご丁寧に、両の手の甲をだらりと垂らして、幽霊の真似事をする千夏。かなり悪戯っぽい性格らしい。表情の変化も激しく、まるで幼い子供の用にコロコロと変わる。対する朋幸は、若干呆れながらもあわただしいその変化を楽しんでいるようだ。  ふと千夏の視点が朋幸の方から、彼女のちょうど前方の方へと移る。 (バスがいよいよやって来たのか)  そう思い、朋幸もバス停のベンチから立ち上がろうとした。  が、再び座りなおした。バスはまだやってこない。代わりにやって来たのはひとりの男だった。雨の強く降る日曜の朝。その男は真っ黒な傘をさしてやって来た。傘の影からはこれまた真っ黒な服が見えており、さながら喪服の様だった。顔は見えず、体格と身長から男であることはわかるが、年齢はどうも測れそうにない。  ただ、男の背中からは言葉では言い表しがたい哀愁が漂っていた。ふたりは失礼とは思いながらも、その男から視線を外すことができなかった。
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