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「……っ、は、……っ、まっ」
待ってくれと、ぎゅっと智紀さんの腕を掴む。
俺のものからなのか、それとも唾液の混ざる音なのか、小さな水音が大きく俺の耳に響く。
ほんの少し顔が離れ視線が絡んだ。
智紀さん、と上擦った喘ぎ混じりの自分の声が恥ずかしい。
俺を見つめてくる色欲に染まった目にさらされて、ますます心臓が軋むように跳ねて、さらに強く掴んだ手に力を込めた。
「待って、……っ、ちょっ」
ずっとペースを落とすことなく動き続ける手に焦って声を出すけど止めてくれるはずがない。
ふっと目を細めた智紀さんが俺の唇を舐めて、首筋に顔をうずめる。
舌が肌を這う感触に眉を寄せ、もう一度待ってくれって言う。
――本当、ほんのちょっとでいいから、ペースを弱めてほしい。
正直このままだとあっという間に……吐き出してしまいそうだった。
あの路地裏からずっと燻っていた熱は限界まで煽られて、いつ爆発してもおかしくない。
触れられた瞬間からイキそうだった、なんて、さすがにないだろ。
それに智紀さんのにも触れたい。
だから、ちょっと待ってくれって言ってるのにこの人が聞くはずもなく。
追い上げられるまま吐精感に身体を震わせていると不意に電子音が鳴りだした。
「――……っ、智紀さん……っ、電話……ッン」
俺のじゃない。智紀さんのだ。
着信音とともに微かな振動が伝わってくる。
無視するつもりなのか、そのまま動きを止めない智紀さんに俺は迷いながらもポケットをさぐって智紀さんのスマホをとりだした。
ちらりと見えた液晶。
「っは、……んっ、待っ、電話っ。あの、松原さんの……お兄さん、ッぁ」
もう片方の手が胸をすべり突起を弄ってきて間抜けなくらいに声が裏返った。
スマホを持つ手の力が緩みかけたけど、紘一さん、と表示されていた名前に溶けかけていた理性がほんの少し引き戻される。
仕事の電話なんじゃないのかってスマホを智紀さんの肩に押しあてたら、無表情に智紀さんはスマホを受け取り――電源をオフにした。
「……っえ、電話!」
「どうせたいした用じゃないからいいんだよ。ていうか、ちーくん」
スマホは床に落ちていた鞄の上に放られる。
そんな投げて大丈夫なのかと目で追っていた俺は、鈴口に爪を立てられて息を飲んだ。
「我慢しないでイっていいよ」
強擦られ、ほら、と先端をぐりぐりと押され、甘く囁かれ。
俺は言われるままに白濁を吐きだしてしまった。
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