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まだ桜が蕾をうっすらふくらませている頃、私の足は自然と桜の下へと運ばれる。
その度に涙だけはとめどなく溢れてきて、私は桜の下にしゃがみこんでいた。
いつまでそうしていたのか、もう、流れる涙も尽きた。
そっと、景色を眺めてみると、まちが炎に燃やされているように真っ赤になっている。
ふと、上を見上げると、そんな中でも桜は凛と立っていた。
1本しかない、孤独の桜。まだ花もつけていない。
あの時のように咲くのはまだ少し先だ。
それでも正しい佇まいに、目は釘付けだった。
もう少しここにいたい。
しゃがみこんだまま、また顔を伏せた。
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