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そうしていると、どこからか声が聴こえてきた。
「どうして泣いていたの?」
キョロキョロしても人影は見当たらない。
空耳かな、と思い、そろそろ帰ろうかな、と腰をあげる。
「もう帰るの?」
辺りを見渡してもやっぱり見つからなくて、気づけたことと言えば、もう夕日の欠片も残っていないということだった。
「またきてね、今度は名前、教えてよ。」
心地いい声だった。
姿は見えないけれど、誰かいるのだろう。
「桜木…桜木雨美(さくらぎうみ)。また来るね。」
返事をしたものの声は枯れてしまっていた。
そんなに泣いていたんだとようやく自覚して、私は家に続く道に足を進める。
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