泣き虫

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「うみか、いい名前だね。ここから海は見えないから、どんな景色なのかまた教えてね。」 後ろから凛とした綺麗な声が返ってきた。 どこの誰かは知らないけれど、またここに来てもいいや、って思えた。 振り返ることもせずに私は黙って歩をすすめる。 あんなに綺麗だった景色も今は真っ暗だ。 やっぱり世界は色鮮やかなんかじゃなくて、モノクロだな。 そんなことをおもいながら、色覚の認識について、考え出した。 いつも、思う。 他人から見た世界と自分から見た世界はどう違うんだろうって。 色だって、自分が見えて認識しているとはいえ、みんなが同じように見えているなんてなんで思えるのか。 科学的な面でいけば、眼のつくりと機能についての話になるだろう。 でも、そもそも、色はどうやって定義されているものなのか。 そんな、ひねくれたことをかんがえながら歩く。
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