奇妙なナマズ

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時の流れというものは、いつだって激流だ。 失業してからあれよあれよという間に 1ヶ月経過していた。 途方に暮れた俺は溜め息混じりに 薄汚れた壁を見つめる。 片っ端から企業の面接を受けたのに 今もってどこからも採用されてない。 長い闘いになりそうだ。 ── 猫は良い……。 朝になれば俺の耳を囓って起こし 朝メシをもらうと寝る。 ごく身近な近所をパトロールしては寝る。 家の中でオモチャになるモノと戦っては 寝る。夕飯を食べて満足すると寝る。 ……って寝てばっかじゃないか!羨ましい。 まぁ、今の俺は猫と大して変わらない生活をしている訳だが。 夜のうちに就職情報を漁って、 昼間は面接まで漕ぎ着けた所へ出かける。 合否の連絡を待ちながらも 夜には再び募集情報を探す。 常識人が汗水垂らして仕事をしている時間 外をぶらついてばかりも体裁が悪い。 食料の調達や日用品の買い出しは 人目を避けてスーパーの閉店時間を狙う。 こんな生活を続けていたら 1年を待たずして退職金を喰い潰しちまう。
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