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俺が見つめる壁に向かって
居候の黒猫『黒豆』が歩いて行く。
突然身を低くして何かに飛びかかった。
見ると、壁に掛けてある
ホコリを被った釣竿……。
竿に絡まったルアーと闘っている。
ルアーのフックにはカバーが付いてたけれど
鋭い針で怪我をしたら大変だ。
誤って食べちゃったらもっとマズい。
「黒豆!これは魚じゃないんだぞ」
夢中になる黒豆からルアーを取り上げる。
それでもキョロキョロと
周りを探し続ける黒豆。
まだ仔猫といえる年齢の黒豆にとって
ルアーは本物の魚に見えるのかもしれない。
そういえば最近
黒豆にはカリカリなドライフードしか
食べさせてやれなかった。
いや。
俺だって食事らしい食事なんてしてない。
職を見つけるまでは我慢だ。
ガラス越しに白い猫が
ゆっくりと通り過ぎる。
麻呂眉の白猫、白麻呂だ。
それに気付いた黒豆は
台所の格子がはまった窓の隙間から
さっさと遊びに行ってしまった。
手元には黒豆から取り上げたルアーが
転がっていた。
スズキ君から貰った改造ルアーだ。
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