2028人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は小さい頃から繰り返しボクの夢に出てくる『コウちゃん』にそっくりだった……。
“ボクの小さなヒーロー”
けれどコウちゃんがこの世に絶対存在しない事は、もう幾らなんでも知っている。
何故ならコウちゃんはボクが耐え難い現実から逃れる為に、頭の中で創り上げた虚像のお友だちだから……。
夢の中の彼はいつでも欲しい言葉を言ってくれた。
『おれがずっと守ってあげるから……』
その言葉を支えにボクは今まで生きてこれた。
夢の中のコウちゃんはずっとずっと6~7才のままだったけど、顔や髪を掻き上げる時の仕草や歩き方に至るまで目の前の彼はそっくりだった。
あまりに酷似した彼に夢と現実とが混同する。
「―――う…そ、コウ……ちゃ……コウちゃんっ、コウちゃあああぁんッ!!」
「えっ!?あ、ちょっ―――…」
気が付けばボクは彼めがけ駈け出していた。
慌てたのはもちろん周りの男の人たちだ。
突然腕をすり抜けて自分たちの総長に抱きついたボクに、彼らは驚いて暫し呆然とする。
「えっ、何この子 煌騎の知り合いだったのッ!?」
「………みたいだな」
静かにボクを抱きとめた彼はクスリと笑みを零すと、周りの困惑を余所に何故かそれを肯定するような言葉を口にした。
その曖昧な返答に彼らは驚き、少なからず動揺しているようだ。
そんな彼らの戸惑いも知らず、ボクは背の高い彼のお腹辺りに顔を埋めてそのぬくもりに安堵していた。
夢の中でしか会えなかったコウちゃんと、こうして現実の世界で会えた喜びに打ち震える。
けれど暫くすると急激な睡魔がボクを容赦なく襲う。
夜通し走り続けた肉体は既に限界に達し、更に彼と会えた事で緊張の糸が途切れたのか一気に疲れが出たのかもしれない。
まだ彼の腕の中に包まれていたいボクは、懸命に瞼を手の甲で擦って眠気と戦った。
「……どうした、眠いのか?」
ボクの様子に気がついた白銀の髪の彼は、優しく頭を撫でながら尋ねてくれる。
思考力が低下したボクは愚図る幼子のように首を横に振るが、睡魔がもうすぐそこまできていて瞼も重い。
「フッ、我慢しなくていい。暫く眠っていろ」
「……でもっ…でもっ、」
「大丈夫だ。ずっと傍にいてやるから……な?」
そう言うと彼はボクを軽々と縦に抱き上げ、背中をトントンと優しく叩いてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!