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だがこいつらをこのまま放って置くといつもロクな事がない。
俺は軽い溜息を吐くと和之に視線を向けた。
「とりあえずこの件に関しては全面的に和之だけで動け。補佐は朔夜のみだ、他は手出しするな」
慎重派で法律家の家系である和之なら申し分なく適任だと踏んだからだ。だが一応念の為にハッキングが得意なPCオタクの朔夜も補佐役に付けておく。
それに必要なら俺の名を使う許可も与えた。
「―――ざけんなっ!納得いかねっつーのっ!!何で俺らは動いちゃいけねんだよっ」
「そうだそうだっ!そんなの不公平じゃんかよッ!!」
やはり文句を垂れたのは血の気の多い流星と、好奇心旺盛で何にでも首を突っ込みたがるお調子者の虎汰だ。
正義感の強いこいつらなら尚のことだろう……。
だがそれ故に判断を見誤り、先走った挙句に暴走するのも奴らの欠点だ。チームのトップとして、それだけは許すワケにいかなかった。
「心配すんな、お前らにもちゃんと役割はある」
「んだよ、それなら早く勿体ぶらずに言えよ♪ 」
「本当だよ、んで?俺ら何すんの、何したらいい?」
俺の言葉に二人は案の定、というか喜び勇んで飛びついてくる。ある意味扱い易い奴らだ……。
横で朔夜が堪えきれずにクスクスと笑っていたが、俺は気にせず言葉を続けた。
「流星と虎汰はこいつの警護と世話を頼む。暫く倉庫に置くことになるからいろいろと面倒をみてやってくれ」
子供を溜まり場に置くという事はそれだけリスクを伴う。コトが早くに片付けばいいが、長期戦になるのは目に見えていた。
そうなればどっかのバカな連中が勘違いし、こいつを人質として攫う危険性も出てくる。
それを踏まえての伏線だ。
最初はユルいとでも思ったのか、二人はやや不服そうだったがすぐに状況を察して納得した。
「しっかしこの子よく寝てんな。よっぽど疲れてたのかな?」
話が一段落した所で虎汰が、静かに眠る少年の顔を覗き込みながら言う。
皆が頷き、一斉にこちらへと目線を向けた。和之たちの目には優しさと労りの眼差しが含まれていた。
見るとそいつは俺の腕の中で安心しきっているのか、安らかな顔で静かに寝息をたてている。
今までどんな扱いを受けていたのかは分からないが、俺たちには想像もできないような辛い日々を送ってきたのだろう。
それを思うと胸が酷く痛んだ。
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