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「何やってんだ虎汰ッ!手に負えねーならすぐ連絡入れろっていつも言ってるだろがッ!!」
「あ、流星……」
騒ぎを聞きつけたのか後方から飛ばしてきた一台の大きな単車が、ボクたちの直ぐ近くまで乗り付けてきて止まった。
そしてゆっくりと男の人は地面に降り立つと、呆然とする金髪の男の子の傍まで歩み寄ってくる。
ボクは先ほどまで泣き叫んでいたのに、ピタリと涙が止まった。だってすぐ目の前にまでやって来た彼が、むかし読んだ絵本の中に出てくる赤鬼そっくりな髪色だったから……。
涙でぐちゃぐちゃな顔のまま、呆然とその鮮やか過ぎる真っ赤な髪の持ち主を凝視する。男の人は虎汰と呼ばれた金髪の男の子よりも遥かに背が高く、体格もガッチリしていて逞しかった。
だけど二人共顔は物凄く整っていて、周りの人とは違う空気を身に纏っている。金髪の男の子も赤い髪の男の人も外見はまるで違うのに、どこか似ている雰囲気を感じさせた。
そんな赤い髪の男の人がボクに視線を向ける。
その途端ビクンと肩を震わせ、蛇に睨まれた蛙のように硬直した。
「で?どうした、コレ」
「それが俺にもよく分かんねーんだ。ここいたら危ねぇし、とりあえず移動させようとしたら……泣かれちゃった。テヘッ」
「泣かせちゃったじゃねーだろが、ったく……」
金髪の男の子はペロッと可愛く舌を出し、ヘラヘラと笑う。そんな彼に対し赤い髪の男の人は、呆れたような顔になって肩を竦めた。
でも内心は困惑しているのが見てわかる。
初対面の彼らにここまで手を煩わせてしまって、ボクは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
けれど身体が勝手に萎縮してしまって言うことを聞いてくれない。せめてワケを話そうと口を開くが、泣いてしまっている所為で喉が詰まって上手く喋れなかった。
だから懸命に首を振り、縋る目で彼らを見上げる。すると……、
「なんっだよこの生き物っ、めちゃくちゃカワイイんだけどッ!?」
赤い髪の男の人が掌で口元を覆いながら言う。
意味が分からず首をコテンと傾げると、彼は大きな身体で飛びつくようにボクに手を伸ばしてきた。
「―――ひゃうっ!?」
「あっ、流星のバカッ!?ってオイッ、だからそっちはマジで危ねぇって!!」
その唐突な行動にまたもやパニックに陥ったボクは、周りに大きな鉄の塊が走行しているのも忘れてそちらの方へと逃げ出す。
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