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それを見た金髪の男の子が慌ててその前に立ちはだかり、両手を広げて行く手を遮った。
逃げ場を失い前後を彼らに挟まれてしまったボクは、この窮地から逃れたい一心で横を抜け尚も二人から遠ざかろうとする。
だけど行動を読まれていたのか、赤い髪の男の人の手によってボクはいとも簡単に拘束されてしまった。
「悪かったって、危ねーからもうじっとしてろ!」
「い……いやああぁッ!離してぇ……離っ、……誰かぁ……誰か助けてぇッ!!」
彼に触れられるとまた発作のように狂乱してしまう。
それが嫌で力の限りに抵抗したが、ボクよりもふた回り以上に大きい男の力で掴まれた腕はビクともしない。
非力な自分が歯がゆくて悔しくて、ボクは拘束されたままその場に泣き崩れてしまった。
あの屋敷からやっと抜け出せ、自由になれると思ったのに、ボクの胸はもう絶望感で押し潰されそうだった。
「お前ら二人が揃いながら何だこのザマは……」
「へぇ、流星も虎汰も珍しいな。こんな小さな子どもひとりに手こずるなんて」
背後から低い二人組の男の声が聞こえ、ビクッと肩が跳ね上がる。また新たな介入者に驚愕し、ボクはそちらも見ずにジタバタともがいた。
だけど強固に掴まれた腕は解けず、逃げ出すことはできない。
それでも何とか離して貰いたくて、彼に伝えようとするけど嗚咽が漏れてそれを邪魔する。だから目だけで必死に“離して”と訴えてみた。
なのに赤い髪の男は困ったように笑みを返しはするものの、離す気はないのかその手は緩めてはくれない。ボクは諦めきれず尚も縋って見つめ続けた。
「だからその顔やめろっ、抱きつきたくなンだろがッ!!」
「―――はぅっ!?」
赤い髪の男はボクの視線に耐えきれなくなったのか、顔を己の髪色の如く赤く染めるとそっぽを向く。
そんな彼の一部始終を見ていたオレンジ色の髪をした長身の男の人が、何が面白いのかいきなり吹き出した。
「あははっ、鬼の特攻隊長が形無しだな!」
「ウルセェ!俺は小動物系には弱いンだよッ!」
「フン、威張れたことかよ……」
もう一人の軽く脱色しただけの茶髪な男も彼を揶揄する。ボクはワケが分からず、ただ呆然とその光景を傍観した。
目の前でワイワイと楽しそうに戯れ始めた彼ら……。
何となく羨ましいと思ってしまった。ボクには友だちがいない。喧嘩をする相手すらもいない。
急に疎外感を感じて哀しくなってくる……。
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