1 うつつのまぼろし

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 二人のやり取りをすぐ傍で、遠巻きに眺める。 「かなり良くなられたようですよ。今日はおひとりで起き上がることができました」  ゼセルの調子を簡潔にミラベルに報告する。 「まあ、それは良かった。元気になるのは、もうすぐね」  ミラベルは言葉の隅々に笑みを飾る。  ゼセルの方はというと、うつむいたまま体を硬くしている。    このまま床に伏せっておきたい。そう言いたいようだ。 「ねえ、ゼセル。起きていると、髪が邪魔にならないかしら?」  ミラベルが中途半端に長い主の髪に触れる。 「いいよ。このままで」  ゼセルの言葉を無視して、お付きの侍女がどこからともなく結紐と櫛を持ってきた。 「ありがとう。マルカ」  侍女にそう言うと、ミラベルが紐を手に取った。 「ミラベルさま?」  マルカが目を丸くする。 「いつもの三つ編みでしょう? 私が結うわ」 「ミラが? 結んだことあるの?」  ゼセルも驚いている。
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