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2 在りし日
昼下がりの空き教室は、異空間のような静けさをまとっている。
廊下に響くあわただしい足音は、幻聴と錯覚しそうなほど不明瞭に聞こえる。
私は静寂の中で、ひとり待つ。自分の唯一の生徒が、扉を叩き沈黙を破るその時まで。
今日の授業はつい先ほど終り、窓の外には、各々、好きな場所へと駆けて行く少年たちの姿が見える。
彼らは、このフォディーナ学院で学ぶ生徒たちだ。
私はふと、この学院に入学した時のことを思い出す。
貴人の子息に交じって、この学び舎で過ごすことは容易ではなかった。
学問はもともと高貴なもののためにあった。
数十年前から、侯爵家の一つのアシュレイ家が市井の子供たちの学力向上に着手するようになり、識字率の底上げを行った。
彼らは篤志家を支援し、日曜学校開設の促進を図った。
そして、平民の子供でも、高い学力を身に付けた者には奨学金を与え、学院で学べるように制度を整えた。
私はその制度により、奨学生として入学した。
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