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幼い時、手作りの雑貨を売る小さな店を営んでいた我が家は襲撃にあった。
家財もなけなしの金も、そして父母の命までも奪われ、私の心は荒んでいた。
父の友人に引き取られてからは、安穏な日々を送っていたが、それだけでは満たされなかった。
破壊行動にいそしみ、すべてを奪われた虚しさと怒りをぶちまけていた。
友人と呼べる存在もなく、幼少期から飼っていた犬のリッキーだけが心の支えだった。
脳内に元気に駆け回るリッキーの姿が浮かぶ。
しかし、その映像はあまりにも不鮮明で懐かしさを感じることはできなかった。
それほど長い時が経ってしまった。
今思えば、入学のきっかけとなった師との出会いも、はっきりと思い出すことができなくなっていた。
彼に会った時、闇の中が照らされていくような感覚を味わったことだけが、心の片隅に残っている。
師が私に与えてくれた光は、日の出のように力強く、優しい光だったことに違いないが、もはや今では、短くなった蝋燭の小さな火にすぎない。
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