君が生まれた日

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
* 「今日は特別な日だ。やっと会えたね」 産まれたばかりの我が子を、恐る恐る抱いていた君のパパ。 君のパパは、普段から感情を表に出さない人だったから、ママはその時のことをよく覚えているんだよ。 パパはそう言って、小さな君を愛しそうに微笑みながら、見つめていた。 君が産まれた日のことも、昨日のことのように覚えているよ。 4日前から陣痛が続いていて、その日も、朝からママは繰り返す痛みに、ずっと耐えていたんだ。 パパは、そんなママをよそに、持ち込んだ書類の整理を淡々とこなしていたな。 朝も昼も、ご飯が食べれないくらいに痛みが襲ってきては、何度もベッド柵にしがみついていた。 きっとその時、君は何がなんだか分からないなりにも、必死に外へ出ようとして頑張っていたんだろうね。 君のその頑張りが、あの時のママには、とにかく痛くて、たまらなかったなぁ。 夕方近くになって、分娩室へ行って君を産む時、ママがどれだけ頑張っても君が産まれてこないから、実は1度、へこたれそうになったんだよ? でもね、助産師さんに、ママになるんでしょって叱られたんだ。 叱ってもらえたお陰で、ママは冷静になれたんだよ。 君のことを絶対に産むんだって、強く思った時。 そしたら突然、君が出てきたんだ。 君が突然現れたものだから、助産師さんも産科の先生も、それは慌てていたよ。 後で聞くと、そんなに早くに産まれてくるとは思ってなかったんだって。 産まれてきた君の産声は、驚く程小さくて、まるでネコみたいに泣いていた。 ニャーってね。 助産師さんが、産まれてまもない君を綺麗に拭いてくれて、ママのところに連れてきてくれたんだけどね。 ママの胸元に乗っかった君は、それはもう本当に小さくて。 でもその時のママは、すっかり疲れはてていてね。 他のママのように、感動したと涙を流す訳でもなく、会えて嬉しいと喜ぶ訳でもなく。 ただ、裸ん坊の君が寒くないのかなって、それだけを心配していた。 産まれたその日の晩から、君はママと一緒に寝たんだよ。 産まれる前もずっと一緒。 産まれてからも、ずっと一緒。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!