衝突

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 窓から眺めた空は突き抜けるように蒼くて、鳥は自由を謳歌するように囀りながら其処を舞う。  ありきたり。どこにでもあるような、誰にでも出来そうな、ひどく退屈な表現。  私には、やっぱりこの程度しか出来ないんだ。 「作品出してきたよ! 後は誰が残るか、楽しみだね!」  伸びが良くて、人懐こいような声。私の暗くて低い声とは正反対な姉さんの声。私の大嫌いな彩の声。 「部長は良いなぁ。文才があるから。僕はそういうの無いから、正直、自信がないですよ」  お前はまだ良いだろう。私より上手い。一番下手なのは多分、私だ。 「大丈夫だって、翔君の作品は、物語の魅せ方がすごく上手だもの」  そんなフォロー白々しいよ、姉さん。部長面とかしなくていい。文芸部はあなたの為のステージじゃない。才能のひけらかしは、もう止めて。  喉元をせり上がってきた言葉を、無理矢理に呑み込んだ。関わらない方が良い。私が言ったって、負け惜しみにしか聞こえないだろうから。  恥ずかしそうに「そんなことはないよ」って、馬鹿なのかな。お世辞に決まってるじゃん。 「私はそもそも部門が違うしなぁ。勿論、彩みたいな才能は無いしね!」  花乃はいつもこんな風だ。自虐するときだって、茶化すように笑って話す。苦しくないのかな。 「えっ、花乃、小説も書いてくれたんじゃないの?」  書くわけがない。花乃は今までだって、詩か短歌しか書いてこなかったじゃないか。 「四つあったんだけどなぁ、作品」 「私じゃないよ?」 「じゃあ、美弥が、美弥が二つも書いたの?」  だからなんだ。  妹が二つも作品を書いたら可笑しいのか? 「何よ、その反応。妹が二つも書いたら変? 私は彩と違って、パッと書いて入賞なんて出来ないのよ!」  双子の姉。産まれたのが早かったのが彩だっただけ、なのに、なのにどうして、アイツは天才で、私は凡人なの?  勉強だって、スポーツだって、何をしたって彩が上。私の居場所(文芸部)だって、いつのまにか彩に奪われていた。  馬鹿にしないでよ。馬鹿にすんなよ。彩が居るせいで、私が頑張るだけ馬鹿みたいじゃないか。
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