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俺はこれまでの自分の人生で、起こる筈も無い
イベントに理解力が追い付かず、呆然とその光景を眺めていた。
幼女はそんな俺の視線に気がつき、目を開き俺を
睨むと俺を突き飛ばした。
「目を結べと言ったじゃろう」
「主は女子の扱いもわからぬ、うつけ者(バカ者)か！」
彼女がそういうと、これまで解らなかった彼女の
言葉の意味が、中略をつけて頭の中に流れ出した。
「これはいったい？」
俺が戸惑って彼女を見つめると、彼女は満足気に
頷いた。
「どうやら言の葉(言葉)が通じるようになった
ようじゃの」
俺はこの不思議な現象に戸惑い、その現象を誘発した幼女の存在に戸惑った。
「いったい何をしたんだ？」
不可解な現象とあいまって、この幼女がものの化や怪異のたぐいに見えた。
「あだなりのぅ(頼りないのぅ)。
ゆゆし(不吉。気味悪い)顔をしおってからに。
口吸い(キス)を知らぬのか？
そうじゃのぅ。
ここで行き逢うたのも天の導き。
向後のために、少し説き起こそうか。
(今後のために、少し補足しようか)」
「妾の言葉は何も蛮国語(外国語)ではない。
内地(国内)の古い、今は滅びた言葉じゃ」
「日本語なのか？」
「ああそうじゃ。
日の本(日本)の今は忘れ去られた古い言葉じゃ」
「蛮国って？
普通昔の人は外国のことを南蛮って言わないのか？」
「まぁ大まかに蛮国(外国)を南蛮と言ったりするが、正しくは南蛮は今のスペインやポルトガルの
事じゃ」
「へぇ。中国じゃあないんだ」
「中国は、唐土じゃ。
当時の貿易は南蛮主体じゃったからのぅ。
もちろん中国とも国交はあったが」
「アメリカは当時無いとして、ヨーロッパは？
でもそうか、交流ないか」
「そんな事はないぞ。
ヨーロッパは泰西じゃ」
「ちなみにイギリスは紅毛とか、譜尼利亜とか暗厄利亜と言った」
ジオグラファー(地理学者)のオリジン(起源)に、
新しい歴史が刻まれてゆく。
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