本編

8/16
前へ
/183ページ
次へ
「じゃあ君の(しゃべ)っている言葉は、 戦国くらいの言葉なの?」 「()(あら)ず。 (そうではない) 始終(しじゅう)(及第点(きゅうだいてん))と言ったとこか。 やも(いや)()に(げんに)そうなのじゃが、 妾(わらわ》の言葉は平安時代くらいから現代まで混じっておるからのぅ」 「それって不便(ふべん)じゃないの?」 「()な(変わった)ことを。 ()も(いかにも)不便じゃが、(せん)(仕方)なかろう。 そう言う風に育ったのじゃ 現代語に直すのにも、刻限(こくげん)(時間)がかかるのじゃ」 なんか複雑(ふくざつ)事情(じじょう)があるようだ。 これ以上の質問は、家庭の事情に()み込んでしまうかもしれないと躊躇(ちゅうちょ)する。 「(おも)はゆいのう。 かまわぬ忌憚(きたん)(遠慮)なく申せ。 (わらわ)寛恕(かんじょ)(心が広く思いやりがある)じゃ。 讒言(ざんげん)(嘘、(いつわ)り)(たばか)り(はかりごと)を(もう)さぬ限りは、怒ったりせぬ。 言わまいて(言葉に出して言って)みよ。」 「じゃあさ。さっき言ってた、みやごととか、 何とかってなに?」 「あっあ閨事(みやごと)(SEX)か」 彼女がその単語を口走るだけで、 その意味が理解できた。 「それは?」 彼女が説明を始める。 「いやいい! もう意味はわかったから」 俺は(あせ)ってそれを制止した。 品性(ひんせい)倒壊(とうかい)している。 彼女は外人のせいなのかそう言った()(ごと)(うと)い、良く言えばおおらかなようだ。 「あのさぁ。 女の子なんだからそう言う言葉は、 使わないほうがいいよ」 俺は彼女の将来のために注言(ちゅうげん)する。 「言葉とは、昔の話言葉か?」 「そもじらは忘れているかめも知れぬが、 これも立派な()(もと)の言葉じゃぞ」 「いやむしろ 、由緒(ゆいしょ)正しき正式な()(もと)言霊(ことだま)じゃ」 「そうじゃなくて、閨事(みやごと)とか睦事(むつごと)とか」 「ん? 現代語で言ってくれんとわからんな」 「だ、だから。 レ○プとか○ッチとか、セッ○ス、S○X。 ⅩⅩ行為。 ⅩⅩⅩ○○ⅩⅩだよ!」 彼女は頬杖(ほおづえ)をついて、そんな俺の様子(ようす)を楽しげに (なが)めていた。           ―4―
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加