本編

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「なんだよ!」 俺はふてくされた子供の様に、幼女を(にら)んでいた。 「其許(そこもと)の言う事は()に理解に苦しむのぅ。 これも現代の怠惰(たいだ)(まね)いた愚考(ぐこう)齟齬(そご)腐敗(ふはい)というやつか。 (なげ)かわしい」 「いや、(ぬし)の好きな現代語で、 劣化(れっか)と言い換える事も出来るかのぅ」 そこまで言われるとこちらも現代人代表の様な 気持ちになってくる。 「お前だって現代人だろう。 現代語、使えないのかよ」 子供に噛みつく成人男性のみっともなさを脇に置いといて、俺は幼女に噛みついていた。 「(むべ)なるかな。 (もっともな言い分じゃな) ()にさもありなん。 (なるほど、いかにもそうか) これは少し、事割(ことわ)り(説明)不足じゃったかも 知れないな。 これはしたり。 そこにかんしては(わらわ)の落ち度か」 少女はそう言ってから少し間を置いて話し始めた。 「有体(ありてい)(もう)せば、(わらわ)今生(こんじょう)(ことわり)で考えられる 存在ではない」 幼女が電波がかった事を語り始める。 「ちはやぶる(荒ぶれる)神代(かみよ)(神々)の時より ()()りて(存在して)、 世々(よよ)転変(てんぺん)(時代の移り変わり)を越え ()()(この世に実在する)存在」 彼女の話は段々(だんだん)、都市伝説の様相(ようそう)を帯びてきた。 「事旧(ことふ)る(言い古された)言い方で、彼岸(ひがん)に近い存在(生死を超越(ちょうえつ)した理想の境地(きょうち))とでも言えるか」 ・・・ どうやら頭に(アリ)を飼っている様だ・・・ その時になって始めて俺は、 自分の(あやま)ちに気がついた。 なんで気付かなかったんだ。 彼女のコスプレを見れば、この幼女が、 あちらの世界の住民なのは明らかではないか。 コスプレーヤー。 それは異能(いのう)の集団。 それは2次元からの来訪者(らいほうしゃ)異端(いたん)の存在。 電波少女。 その時になって(あらた)めて俺は、関わってわならない 人種に接触(せっしょく)してしまっていた事に、気付いたので あった。
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