煩悩経《ぼんのうきょう》

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少女の無邪気(むじゃき)誘惑(ゆうわく)(まど)わされるな。 俺は辛辣(しんらつ)に言い放った。 「煩悩(ぼんのう)(はら)ってるんだ! 危険だから近付くな! (めつ)(めつ)(めつ)(めつ)滅菌(めっきん)!!」 彼女は知らない。 童貞の妄想(もうそう)万物流転(ばんぶつるてん)の、生き地獄の苦行(くぎょう)だと 言う事を。 彼女は知らない。 童貞が、()き放たれた野放(のばな)しの発情期の(けもの)だと 言う事を。 少女は(あき)れた(よう)嘆息(たんそく)をつく。 「ハァー。 奇異(きい)な事を。 余人(よじん)には考えつかぬ事を言いよるのぅ。 一寸(いっすん)の虫の命は、所詮(しょせん)一寸(いっすん)か。 文目(あやめ)もわからぬ(形がはっきりしない)事を申すな。 主は埒外(らちがい)のうつけか?」 「うるさい!自分の姿を良く()てみろ!」 それでようやく股が、スースーするのに 気がついた様な素振(そぶ)りで(あき)れた(よう)(つぶ)いた。 「かまびすしぃのぅ。  (さわがしいのぅ)」 やれやれ。 凡俗(ぼんぞく)な(下品で卑(いや)しい)事よ。 気をやって、おかしくなったのかと思ったぞ」 俺は耳無し芳一(ほういち)(ごと)一心不乱(いっしんふらん)に、 念仏(ねんぶつ)もどきを(とな)え続けた。
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