煩悩経《ぼんのうきょう》

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ベッドで仰向(あおむ)けで()()り、天を(あお)いで痙攣(けいれん)する、幼女の姿があった。 だらしなく開かれた幼女の口唇(こうしん)蛇口(じゃぐち)が壊れた様に、だらしなく()れ出した唾液(だえき)視野(しや)の定まらぬ目が虚空(こくう)(ただよ)う。 泡沫(うたかた)を漂う少女。 その姿に、栄枯盛衰(えいこせいすい)(ことわり)が重なって見える。 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声。 処女無情(しょじょむじょう)(ひび)きあり。 おごれる者も(ひさ)しからず、ただ夏の世の夢の(ごと)し。 俺が一句(いっく)()み終えると、眠れる森の幼女は目覚め、俺を見つめ言祝(ことほ)ぐ(喜びや祝いの言葉を()べる)。 「円寂(えんじゃく)(仏の死)させる気か! 節度(せつど)なく(むさぼ)りおって。 この魔性(ましょう)の変態が!」 変態? 変体? 変身? ヒーロー! 英雄か! 「そうだ。俺は、いや俺が!お前の変態だ!!」 幼女は(うる)んだ瞳で脅えたように、何か大事なものを壊された様に、(うら)めしく俺を(にら)んでいた。 「変態」 防衛する様に毛布にくるまり、子犬のように吠える幼女。 そこにはそれまでの気丈(きじょう)な姿は無く、 幼女さながらの(つたな)い言葉だけが残されていた。 雄弁(ゆうべん)尊大(そんだい)妾様(わらわさま)が、見た目(どお)りの(わらべ)変貌(へんぼう)していた。 (しずく)の奥で揺らめく瞳に、非難する様なその眼差(まなざ)しに俺の理性は再び吹き飛ぶ。 「うぃい(やつ)じゃのぅ!」 叫ぶが速いか、滑稽(こっけい)なまでの動作で乳を()む仕草をすると、その(おび)える幼体に向かってダイブしていた。           ー7ー
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