序章

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俺は、 その禁足地(きんそくち)の奥から聞こえる(わらべ)声音(こわね)(さそ)われる(よう)に、 禁足地に足を()み入れていた。 夕霧(ゆうり)(かす)木立(こだち)の中を進むにつれ、 声がそれを追いかけるように小枝(こえだ)を揺らし、 反響(はんきょう)していた。 「夜明けの晩に~」 童子(わらべ)声音(こわね)雑木林(ぞうきばやし)乱反射(らんはんしゃ)し、 不思議な音色(ねいろ)(かな)でている。 「夜明の晩に~」 夜明の晩とは朝の晩、 つまりは日蝕(にっしょく)ではないのか。 日食(にっしょく)の日の五つ(どき)に・・・ 鶴と亀がすべった。 すべたが()べただとすれば・・・ 支配。 鶴亀伝承(でんしょう)(たた)えた神社。 続けて歌えば。 籠目(かごめ)籠女(かごめ)。 加護の中の鳥居は。 (いつ)(いつ)、出やる。 夜明けの晩に。 鶴と亀が統べた。 後ろの正面だ~れ。 加護の中の鳥居とは、つまりは神社? (いつ)(いつ)、出やるとは、つまりは世の(ことわり)を越えた 場所を出ている。 夜明けの晩とは、日食の日。 鶴と亀が()べた。 鶴と亀の伝承を(たた)えるこの場所神社で。 後ろの正面。 この神社には後ろにも鳥居がある。 つまりは後ろの正面も鳥居だ。 日食の日、この神社の鳥居(とりい)をくぐり 後ろの正面の鳥居まで行き、五つ刻までに、 後ろの鳥居よりすでに出ておく。 これが答えか? 確か古来日本には言霊(ことだま)と言う考え方があった。 言葉には霊力が宿(やど)ると言う。 例えば良い言葉、好きや愛などには良い霊力が。 その意味で考えれば、 かごめ唄は1つだけの意味で考えるよりは、 その唄の中には全ての意味が含まれると考えた方が 良いのかも知れない。 もう少しで何かに気付きそうになった時、 再び(わらべ)の声がした。
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