本編

2/16
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
脳内にリテンション《保持》されたデータベースに アクセスするがこの状況(じょうきょう)を表す言葉は見つからない。 いや理解不能。 思考(しこう)停止。 バグ発生の、三大トライアングルに(おちい)っている 真っ最中(まっさいちゅう)だったりする。 俺の名は菊池和輝(きくちかずき)。 花の16才。 俺は菊池和輝。 童貞(どうてい)16の春。 俺は菊池和輝。 シスコん歴10年。 俺は菊池和輝。 (よわい)16にして、夢を卒業し現実を見据(みす)える 未来ある若人(わこうど)。 俺は菊池和輝。 俺は菊池和輝・・・ 「やよ、そこな(しゅう)。  先達(せんだ)って何を()(ごと)(もう)しておるのじゃ?」 変なコスプレした幼女が、 俺のベッドを不当に占拠(せんきょ)し、 これまた変な日本語で俺に(ささや)く。 人に死があるように、言葉にも死がある。 死語の世界。 忘却(ぼうきゃく)彼方(かなた)に旅だった(こと)の葉たちの墓場。 そんな死語の世界から(ささや)かれた声に、 体が死語硬直(しごこうちょく)する。 幻覚、幻影、空音の(たぐ)いに違いない。 「さては其許(そこもと)俗諺(ぞくげん)に聞く、  スカトロじゃなかった・・・  ストーカーとか言う(やから)か?」 不法侵入した幼女が、異世界の言語をつむぐ。 「お前が言うなー!」 思わず幻影に答えて、自分の症状の深刻さを再確認する。 「なんじゃお主。やたら狂暴じゃが。  発情と言うやつかえ?」 変に古びた口ぶりで、変に大人びた言葉を話す この生物。 この珍語(ちんご)(しゃべ)る幼女はなんぞや。 未知の新種(しんしゅ)と思えるが、どんなに観察(かんさつ)してもやはり幼女にしか見えない。 銀髪にスカイブルーの瞳、和服(わふく)にチビと 変にカスタマイズされてはいるがやはり幼女だ。 和装(わそう)貴婦人(きふじん)ならぬ「わっ!そう」のちんちくりんだ。 可愛さはあるが大人の魅力は皆無(かいむ)のまな(いた)幼女(ようじょ)だ。 幼女だ。 妖女だ! 幼女だ!? 「いや冷静になれ俺。中二病は卒業した(はず)だ」 多分・・・           ー1ー
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!