第2章 Never judge by appearances

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 涼川美麗から逃げ切った俺達は、ラーメン屋で放課後タイムを満喫している最中であった。俺はネギましましチャーシュー麺、若瀬はラーメン屋に訪れる機会が滅多に無いらしく、隣の席で美味しそうに醤油麺をすすっていた。 「そういえば西条くん、涼川さんと喧嘩でもしたの?」 「喧嘩?アイツと俺は常に全面戦争状態だっつーの。あと俺は、あの女と仲良くしたつもりなんて無いし、今後しようとも思わない」  端からしたら俺はそんな風に見えているのか...。今後もなるべく距離を取っておかないと誤解が広まっちまうな...。 「そっか...西条くんと涼川さん、お似合いだと思ってたんだけどなぁ」  若瀬、お前には悪いが、お前の頭の中で描かれている恋愛妄想小説はここで打ち切りだ。最終章の題は『西条和也、黒薔薇のプリンセスに勝つ!』にでもしておこうか。うん、いい最終回だった! 「すみませーん、替え玉くださーい」 「はいよー」  俺の新生活をあんな女に壊されてたまるか。絶対にヤツを倒してみせる! ……と、自ら豪語しておきながら、翌日ある事件が起こった。  今日も登校時間ギリギリにやって来ると、何だかクラスの中が騒がしいご様子。俺が教室に入ると、それまでの騒ぎは一瞬にして止み、やがて静寂が訪れた。皆さんこちらを見てる、見てる、俺いつからこんなに人気者になったっけ?  そんな冗談はよしとして、一部の生徒が見つめている黒板へと俺も視線を移す。そこには、こんなことが書かれていた。 “ネギましましチャーシュー麺 替え玉1玉 西条和也”  夏目漱石の小説かよ!と突っ込みを入れたくなったが、俺に恨みを持つ生徒は数少ないはず。昨日のラーメン屋までつけてきたとはな。  宣戦布告なんてやってくれるじゃないか。これでも俺は、やられたらやり返す主義の人間なんでね、黙っちゃいないぞ。絶対にぶっ倒してみせる、そう俺は心に誓った。
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