第1章 No sweet without sweat

3/11
前へ
/19ページ
次へ
 始業の鐘が鳴り、担任が教卓の前に立つ。  蒸し暑い季節になってきたものの、まだ5月の上旬ということもあってか、教室の冷房は稼働していない。下敷きやノートで扇いでいる生徒が多いのも、そのせいだろう。 「出席確認だ。お前ら席に座れ」  ガタガタと皆が一斉に席に着き始めた。俺は窓側の一番後ろという、なかなか良いポジションに座る。 「松本」 「ーはい」 「森谷」 「ーへーい」  窓側席は深夜の通販番組よりも退屈な授業中に、体育の授業を上から観賞するという特権が得られる。 「若瀬」 「ーはい」  そして、なんといっても窓側後方は憧れの主人公席!せっかくなのだから、この機に主人公属性がついたりしないだろうか。 「西条」  しかも、教師の視界に入る確率が極めて低くなるGreatゾーン!つまり、居眠りの妨害を受ける心配もNothing! 「西条、聞いてんのか」 「……え…あ、はい!」  唐突の呼びかけに驚き、思わず席からロケットジャンプしてしまった。周りの生徒からの視線が痛い(泣) 「ボケっとするな、ボケっと。あと、堀内は今日欠席だそうだ」  そう言い残し、鬼教師の太刀川が教室をあとにした。 ーやれやれ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加