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結果、お漏らし王子の完全敗北で試合の幕は閉じた。
(とりあえずお疲れ様。お前の勇姿、しかと見届けたぞ)
愕然と肩を落としてしゃがみ込んでいる彼の背中を見ながら、俺は心の中でそう呟いた。
それにしても、登校初日からとんでもない出来事に遭遇しちまったな。あの女には今後気をつけないと。関わりたくもない。
野次馬どもに紛れて試合の余韻に浸っていると、再び彼女が声を発した。
「では皆さん、ごきげんよう。行くわよ雪菜」
「はい、お姉様」
先程まで全く気付かなかったが、どうやらこの冷徹女には、子分らしき女がついているようだ。こちらは小柄のショートヘアで、物静かな雰囲気。生徒を子分につけるなんて、恐ろしい女だ……。
「今日も黒薔薇のプリンセスは凄まじかったな」
隣にいた男子が突然、彼女の姿が見えなくなったタイミングで話し始めた。
「黒薔薇のプリンセス?」
「まさか、お前知らんの?」
「えっと...はい。実は今日、転入してきたばかりでして」
ここの生徒にとって彼女は有名人物なのか。確かに性格はあれだが、見た目だけでも十分話題にはなりそうだしな。
「そうか、それは初日から幸運だったな」
-えっ
「いやぁ、美麗様のあの冷たい眼差し。堪らんなかったなぁ///」
あぁ、俺は知ってるぞ。
こいつアレだわ、ヤバいやつだわ。
「いつにも増して美しく見えたぜ俺には」
「そ、そうですか。それは何というか、良かったですね…」
とりあえずその場の雰囲気に乗っておくことにした。まさかこの学校の生徒皆、コイツみたいなヤツじゃないだろうな?そんな俺の心配を差し置いて、再び男子生徒が口を開いた。
「それより君、そろそろ始業の鐘が鳴る頃だけれど」
「あっ、やっべ」
せっかくの新生活を遅刻デビューしたくはないので、駆け足で校舎へと向かっていく。変わったやつだったが、時間を伝えてくれたことだけには感謝しないと。
-ん…?というか、お前も遅れるだろ!
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