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ザァァと激しく地面に打ち付けるような雨音。
薄れつつある意識の中、
木を背もたれに座り込む〝少女〟は
重たい瞼を開く気力もなくただぼんやりとその音を聞いていた。
その中で少女は、
雨音に混じって聞こえる懐かしい声を拾った。
ようやく薄ら瞳を開いた時、
少女の前には、
膝をつきそっと彼女の頬に手を添える青年の姿。
冷えてほとんど感覚が鈍ってしまった頬の、
唯一、彼の手が触れたところだけがあたたかい。
それはとても懐かしく、目頭が熱くなった。
とめどなく、涙が溢れて止まらない。
「姫、様…?」
青年は、エメラルド色の瞳で、
少女の顔をじっと見つめた。
彼に真っ直ぐ見据えられると
突然込み上げてくる
〝果てしない愛おしさ〟
本当は、とうの昔に捨ててしまったはずだった。
「いいえ…いいえ、私は_」
貴方は
私を憶えているのだろうか___
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