雪道

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早めに仕事を切り上げ事務所を出たものの、 アスファルトは雪で隠されていた。 雪はまだ降り続いていて止みそうもない。 車道には轍が出来始め、歩道は狭い幅の筋が出来ている。 (帰るの面倒くさいから事務所に泊まろうかなぁ。。)と、 弱気になるも意を決して家までの道を歩き始めた。 ぎゅっ ぎゅっ 雪を踏みしめると聞こえてくる音。 ぎゅっ ぎゅっ 踏みしめる度に靴に雪がしみてくる。 (足、冷てぇーーーー) (こんな夜はコマーシャルみたいにクリームシチューを作ってる家庭も多いんだろうな) (俺はコンビニに寄っておでんでも買うか。。) (けど、おでん買ってすっ転んだら切ないよなぁ。。) 寒かったり、冷たかったりするとどんどんネガティブになってしまい、 その間もどんどん靴に雪がしみてくる。 時折立ち止まり空を眺め(止めよ!)と心の中で叫ぶも、止んではくれない。 そして俺はまた歩き出す。 ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっ 向こうから子連れの母親らしき女性が歩いてきた。 幅の狭い雪の歩道はすれ違うのも結構大変だ。 (仕方ない、俺が道を譲るか) 足跡のない新雪状態の場所に足を入れると 「ぎゅっ」ではなく「ズボッ」っとなりバランスを崩した。 ホレみろ、おでんを持ってたら悲惨だったじゃないか。 立ち上がって雪を払っていると、向こうからやってきた女性と子供が すれ違いざまに「ありがとうございます」「おじさん、ありがとう」と言って 俺が踏みしめていた道を歩いて行った。 子供が振り返り俺にバイバイと手を振った。俺も同じように手を振った。 ぎゅっ ぎゅっ おでん買って帰るか。
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