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つい熱くなってしまうと、拍子抜けした声が真司のすぐ隣から聞こえてきた。
「あの~。喧嘩するのはいいけどさ、このままだと時間制限でゲームオーバーだよ。だから二人とも仲直りの握手、握手」
その声の主はいつからそこにいたのか、真司と美代奈の間に降って湧いたように立っていた。二人の手を強引に引っ張って、無理矢理握手をさせようとしている。
真司ははっと気づいて後ろに飛び退いた。
目の前にいたのは見るからに線の細い男。中性的な顔立ちで、声を聞かなければ女と見間違えてしまうほどの容貌だ。髪は白く、目は髪に隠れてしまってよく見えない。
「なんだ、お前?」
真司は眉をひそめながら聞いた。
「僕の名前は影宮泉。高校二年生だ」
「ふうん。で、さっきの話をバラすのか?俺が他のプレイヤーを殺そうとしたことを」
泉は首を横にふる。
「大丈夫。そんな不粋なことはしないよ。ただ、君達は中々に面白い。お互いのことを信頼してるように見えて、性格は正反対。なぜだろうね?」
泉が見透かすような視線でこちらの顔を覗いてくる。真司はその目から逃れるように顔を背けた。
「何でもねえよ。んなことより、どっか行けよ。気持ち悪い」
「ふふ、ごめんね。邪魔しちゃって。みんなでゲームをクリアできるといいね」
そう言い残して、泉は去っていった。
「なんだったんだろ、あの子」
美代奈が首を傾げた。
「さあな。大方、さっき人が死ぬところを見て、頭がおかしくなってんだろ」
吐き捨てるように言うと、美代奈が咎めるような眼差しで真司を睨んできた。
「嘘だよ。そんな怒るなって。それより早くしねえと、あいつの言ってた通り、時間切れになっちまうぞ」
「うん」
さっきの威勢が嘘みたいに、美代奈は弱々しく頭を垂れた。
「大丈夫。お前のことは俺が守ってやるから」
そう言いながら、真司は腕時計で時間を確認する。
残り時間はすでに10分を切っていた。
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