死月ロワイヤル

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聞こえよがしに言うと、プレイヤー達の憎しみのこもった視線が真司に集中する。 これでいい。これなら美代奈に敵意が向くこともない。 しかし、と真司は疑問に思う。 もし、美代奈があのとき2番を選んでいたらどうしてたのだろう。そうなった場合、ぴのきおは1番か3番の壇上しかあけられなくなり、このゲームは普通のモンティホールと同じになってしまう。早い話が、このゲームは3分の1の確率でクリアできてしまう運ゲーになってたはずだ。 ……まあ、一つだけ美代奈に2番を選ばせないようにする方法はあるが、それだけは絶対にあり得ない。真司は自分に言い聞かせるように心の中で呟く。 そして、2番が正解だと分かった理由はあともう一つある。 真司はおもむろに歩き出すと、一人の少女の目の前で止まる。カウントダウンが始まる直前、穴の前で不可解な行動をとっていたあの少女だ。 多分、予想が当たっていれば、彼女はきっとあれであるはずだ。 「お前、全盲だろ?」 真司の言うことに誰もが耳を疑ったことだろう。彼女はここにいる誰よりも早くこの穴へと飛び降りた。そんな彼女が全盲であるはずがないと。 少女は小さく口を開いた。 「よくわかったね。なんで分かったの?」 抑揚はないが、小鳥のさえずりのような美しい声。真司が少女の問いに答えようとしたとき、どこからか明るい声が聞こえてきた。 「反響定位でしょ?」 声のしたほうへと向きを変えると、そこには泉の姿もあった。 「やっほー!また会えて嬉しいよ!」 「反響定位って何?」 聞き慣れない単語に、美代奈が眉根を寄せる。 「コウモリが使う超音波と同じさ。あれは音が何かにぶつかって返ってくるまでの時間と方向から、物の位置関係を割り出してるんだよ」 真司がこくりと頷くと、泉のあとを継いだ。 「ああ。訓練を積めば人間でもできるらしい。彼女が穴の前で舌打ちしてたのはそのためさ」 少女はそのことを自慢する風でもなく「調べたら穴の底に広い空間があっただけ」と素っ気なく言った。
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