序章 魔法と科学

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序章 魔法と科学

 幼稚園の遊具室で四人の子供が遊んでいた。三人の男の子と一人の女の子だ。  一人の男の子が、無邪気に手を叩いている。男の手の間にふわふわとした光るものが生まれた。嬉しそうに、光るものを転がしたりあやしたりし始める。  続けてもう一人の子が、手を添えた。光るものは、立方体になったり、円錐になったり形を変えた。積み木で遊んでいた別の子が、立ちすくむ。積み木を取り落とした手を女の子が握った。  幼子の瞳に嫉妬が宿る。  幼稚園の先生が何人も来た。魔法を使える二人の男の子を迎えに来たのだ。特別な教育を受けられる施設に引き取られてゆく。魔法を使える二人の男の子が、先生に抱き上げられ、取り残される子たちにバイバイと手を振った。  生まれながらにして恵まれた才あるもののみができるもの。魔法。  生まれつきできなかったものたちが、できるものたちに隷属されることなく独立自尊を勝ち取るために生み出した科学。  世界は、魔法と科学。それぞれの学閥階級に分かれて対立した。  魔法を使えるものが魔法を使えないものを奴隷として支配した時代。  隷属し支配されてきた魔法を使えない者たちが、科学を生み出した。     
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