0人が本棚に入れています
本棚に追加
「クロ! チョコはお腹を壊すからダメ」
ふんふんと匂いを嗅いでいる黒ネコから、包みを遠ざける。
つややかな黒い毛皮をまとった優雅なクロ。彼はどうやら、沙江の事を下僕か何かと勘違いしている模様。だけどクロの可愛さにメロメロな沙江は、彼の尊大な要望にいつも応えてしまう。今も、遊んで? と上目づかいに鳴かれると断れない。沙江がハンカチを振ると、とたんにクロは獲物を狙う目つきになった。
そういえば、最近お母さんと目が合わないな、と沙江は思う。呼びかけても無視されるし、お父さんもお姉ちゃんもずっと沈んだ様子で構って貰えない。みんな忙しそうなので我慢してるけど、家族との距離が開いてしまったようで少し寂しい。
「構ってくれるのはクロだけだよ」
沙江はクロに向かってバイバイと手を振ってから、図書館へと向かった。
今日はバレンタイン当日、決戦日だ!
最初のコメントを投稿しよう!