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もう何度目だろう。沙江はコートのポケットに忍ばせたチョコをまた確認した。指先が触れた瞬間、ピコンと音が鳴る。
「かえる ねる たべる すてる」
いちいち視界に現れるウィンドウが煩わしい。
今日は日曜日。午前中いっぱい館内をうろうろしていたのに、彼とは出会えなかった。
――なんとなく会えるような気がしたんだけど。まあ、待ち合わせていたわけでもないし。
沙江はちょっぴりしぼんだ気分で、ランチを摂る事にした。
二月とは思えない暖かな陽気だからか、バーガーショップのオープンテラスにもテーブルが並んでいた。その一画がやけに騒がしい。
「お前、いつもどこ行ってんの?」
「サエちゃんって娘に会いに行くんだよなー」
「抜け駆けは許さん!」
ピコンという電子音と同時に、沙江の心臓が飛び跳ねる。
あ、彼! ………………とその他大勢。
「おどる にげる しゃがむ すてる」
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