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沙江は物陰からこっそりと窺った。
どうやら彼は、図書館に行こうとしていた所を友人たちに捉まってしまったらしい。
「すわる まわる たべる すてる」
――さっき聞こえたサエって、私の事だよね?
「ける はなす おどる すてる」
――チョコを渡したいから、一人で来てほしいんだけど。
「なぐる はしる にげる すてる」
――その他大勢、早くいなくなってくれないかな。
「とぶ なく わらう すてる」
さっきからピコンピコンと煩い。彼の話が聞きたいのに、まるで聞こえない。
「すわる なぐる はしる すてる」
「なでる にげる はなす すてる」
「たたかう たべる うたう すてる」
いや、だから捨てないし! 沙江が心の中で大きくつっこんだ時に、彼の声があたりに響いた。
「僕は沙江ちゃんの事が好きなんだ! だから今日だけは見逃してくれ」
おおっ! とどよめくような声と、彼にチョークスリーパーをかけようとする友人たちの姿が見えた。
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