第一章 サクラ-1

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「サクラ、 最近忙しそうだがちゃんと休めているか?」 車が信号で止まると、 父が後部座席の私に話しかけてきた。 私は助手席がどうも苦手でいつも後部座席に座らせてもらっている。 「うん、 ぼちぼちかな。 残業は多いけど、 休日出勤はずいぶん減ったよ」 「そうか」 父は何か言いたそうだったが、 「それは良かった」、 とだけ言って再び運転に集中し始めた。 父は昔からあまり喋る方ではない。 無口というわけではないが、 黙って家族の話を聞いていることが多い気がする。 よく喋る母とは対照的で、 娘の私から見てもバランスのとれた夫婦だと思う。
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