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山下さんは同級生で野球部のマネージャーだ。
黒目がちな瞳が私を捕えた。
いつから、
彼女は私たちを見ていたのだろうか。
彼女は私をしばらく見ていたが、
ふいに視線を外し、
彼のもとに走って行った。
次の日、
私は授業が終わるのを複雑な気持ちで待っていた。
早くハルに話し掛けたいという気持ちと、
どう話し掛ければいいのかわからないという気持ちが同居し、
ムズムズしている感じだ。
クラスメートが部活や委員会のために少しずつ教室を出て行き、
教室に人が少なくなったところを見計らって、
私はハルに話しかけた。
CDの入った袋を持つ手は、
汗で湿っている。
ハルは驚いた様子で袋を受け取ってくれた。
「ありがとう。
すごく良かった」
なるべく笑顔で話しかけようと決めていたのだが、
ちゃんと笑えているか自信はない。
ハルの反応が怖くて、
私は早口で曲のことを話し始めた。
どうやら、
緊張するとたくさん話すクセがあるらしい。
そんな私をハルはしばらく何も言わずに見ていたが、
突然、
吹き出して腹を抱えて笑い出した。
最初、
どうして彼が笑うのかわからなかったが、
私もつられて笑い始める。
ハルの笑顔を久しぶりに見た気がして、
とても嬉しかった。
「サクラ、
こういうとこだけは女子だよなー」
ハルがクリーム色の袋を指しながら言う。
「だけって、
何?」
「そのままの意味」
私たちが軽口を言い合っていると、
窓の外から野球部のかけ声が聞こえてきた。
野球部は来月に他校との練習試合を控えているらしく、
練習にも連日、
熱が入っているようだ。
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