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しかし、
自分の好きな相手が別の人のことを好きであるという事実は、
やはり辛い。
その想い人が同性相手であっても、
それは変わらないのだ。
同時に、
私は嬉しくもあった。
今まで知らなかったハルの新しい一面を、
知ることができたからだ。
敵対心をむきだしにして山下さんを見る彼は、
まるで子どものようだった。
私は野球部の部活が終わるまで待つというハルに付き合うことにした。
今日は顧問が急病のため陸上部の部活は休みらしい。
私たちは野球部の練習がよく見えるよう、
窓際の席に移動した。
窓際の席には日差しが強く当たっていた。
夏も終わりだというのに、
この時間帯でも日差しが強く暑い。
空の遠くの方はもうオレンジ色に染まりかけている。
「音楽聴こう」
そう言って、
ハルは片方の耳にイヤホンをつけた。
彼のイヤホンはゴールドだった。
どこで買ったんだろう。
「はい」
ハルがもう片方のイヤホンを私に渡した。
まさか、
二人で聴くの?
私の心臓は急に大きく脈を打ち始めた。
こういうことは恋人同士がするものだと思っていたのに。
ハルは気にしていないのか、
さっさと課題を始めている。
意識しているのは私だけみたいだ。
私は真っ赤になった顔がハルに見えないよう、
出来る限り下を向いていた。
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