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「…気合入れすぎ?」
私は自分の服装を見下ろして聞いた。
紺色のふんわりとしたスカートに、
普段よりも高いヒール。
髪は今朝、
ゆるく巻いてきた。
いつもはカジュアルな格好が多いが、
今日はデートなので女性らしい服装を意識したのだ。
「全然。
むしろ地味なくらい。
でも、
最初のデートはそれぐらいがちょうどいいわよ」
真紀子は私よりもさらに高いヒールを履いた足を組み直して、
タンブラーに入ったコーヒーをゆっくりと飲んだ。
周りにいた男性社員がその仕草を穴が開くほど見つめていた。
この美人の同僚は、
自分のスタイルの良さを自覚しているだけでなくどうしたらより美しく見せることが出来るのか理解している。
足を組む仕草一つにしたってそうだ。
彼女にかかればそうした何気ない動作も、
優雅で魅力的なものに変わる。
そんな彼女を男性が放っておくはずはなく、
私が知る限り恋人が途絶えたことも一緒に食事に行く相手が途絶えたこともない。
必然、
彼女は久方ぶりの男性からの誘いに戸惑い気味な私の恋愛アドバイザーとなっていた。
「それで、
何が気がかりなの?」
真紀子はすべてお見通しと言うように言った。
やはり、
経験豊富な友人には敵わない。
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