プロローグ

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「俺、 どうしたらいいのかわからないんだ」 ハルの声は震えていた。 電話の向こうで、 おそらく彼は泣いている。 「…今日、 電話が来てさ。 トモから。 招待状送るから来いよって」 私にも彼からメールがあった。 結婚式をするからハルと一緒に出席して欲しい、 と。 彼がハルの気持ちを知っているのかどうか、 私は知らない。 ただ、 それほど話したことのない私を結婚式に呼ぶほど、 彼がハルを気にしているのは間違いないと思う。 「私のところにも結婚式の連絡が来たよ。 彼、 ハルに結婚式に来て欲しいんだね」 彼の結婚の話を聞いたとき、 まず思い浮かんだのはハルの顔だった。 ハルがまだトモのことを好きなのかどうかはわからなかったが、 もしかしたら、 と思っていた。 そして案の定、 ハルから電話が来た。 「行きたくない」 ハルはまるで子どもが駄々をこねるみたいな口調で言った。 ハルはまだ彼のことを忘れることができないのだ。 私はハルのことが心配だ。 人を好きになること自体が悪いのではない。 それが同性であれ異性であれ、 誰にもその好きという気持ちを批判する権利はないと思う。 しかし、 その想いに縛られると、 身動きが取れなくなる。 前を向いて歩くことができないのであれば、 その想いは重荷でしかないのではないだろうか。
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