プロローグ

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そうは思っても、 私にできることはこうして話を聞くくらいだ。 何とかしてあげたくても、 ハル自身が変わらないと何も変わらない。 いつまでたっても状況は高校時代と同じままだ。 少し前にこういう状況になっていたら、 私はハルを変えようと思ったかもしれない。 誰にも言わない本音を打ち明けてくれる私なら、 彼を変えられる、 と本気で勘違いしていた可能性はある。 しかし、 今はもうそんな風には思えない。 私たちのあいだにはあまりにも長い時間が流れてしまった。 「辛いとは思うけどね。 でも、 一生そうしてるわけにはいかないよね」 私はなるべく優しい声で言った。 ハルは何も答えない。 しばらく、 気まずい沈黙が流れた。 「ハル、 今度の日曜はヒマ?久しぶりに高校に遊びに行こうよ」 私はこの沈黙に耐えられず、 彼に提案した。 あまりにも唐突すぎて、 自分でも驚く。 「…良いけど、 サクラは東京だろ?遠くない?俺は車で一時間くらいだけど…」 ハルも私の誘いに驚いた様子だ。 東京から実家までは新幹線で片道2時間だ。 近いわけではないが、 土日で行こうと思えば十分、 時間はある。 結婚式用のドレスを実家に取りに行こうと思っていたので、 ちょうど良い。 私が大丈夫だと答えると、 ハルは「わかった」と承諾してくれた。 「なんか、 サクラ性格変わったな。 積極的になったというか」 社会の荒波にもまれて、 性格も変わったのだろうか。 仕事において受け身では何事も進まない。 そういえば、 私の友人も役職が上がり部下を持ったときから、 性格が男性的になったと言っていた。 どうやら指毛も濃くなったらしい。
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