第一章 サクラ-2

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「僕は六年間ある女性と付き合っていて、 結婚も考えていた。 でも、 一年ぐらい前に彼女が急にフランスに行くって言い出してね。 もともとパティシエをやっていたんだけど、 知り合いの店でやってみないかって誘われたらしい。 それで、 まあ、 僕は仕事もあるしついて行けないから、 僕らは別れた。 でも、 さっき彼女から結婚するって連絡があってね。 向こうの店で一緒に働いている人らしい。 しかも女だって」 「え」 思わず出てしまった言葉に、 森村さんは苦笑した。 「いや、 本当そうだよね。 驚くしかないよ。 全然知らなかったんだ、 彼女がそういう…まあ、 女性が好きだったってこと。 それに、 僕と別れてからこんなに早く結婚を決めてしまったことも。 驚くやら、 悔しいやら、 ね」 森村さんはそう言って、 残ったワインを飲み干した。     
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