第一章 サクラ-2

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近くにいたウェイターが近付いてきたが、 彼は丁寧に断ってデザートを持ってくるように頼んだ。 「サクラさんにこんな話をするのは間違っているかもしれないけど、 僕は彼女のことがまだ忘れられないみたいだ。 もちろん、 サクラさんは素敵な人だし一緒にいて楽しい。 でも、 違うんだ。 これはサクラさんじゃなくて僕の問題なんだよ」 その言葉にはっとした。 この人は、 私と同じだ。 過去の恋人や好きな人に縛られている。 「だから、 会うのは今日で終わりにしよう。 勝手でごめん」  彼はそう言って頭を下げた。 「私も同じです。 忘れられない人がいます」 気が付くと、 私は彼の手を取っていた。 森村さんは驚いた表情で私を見ている。
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