第一章 サクラ-2

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デートからちょうど一週間経った金曜日、 私たちは再び会う約束をした。 場所は私の会社の近くにあるカフェだ。 森村さんの会社からも割と近い。 彼の家からは少し距離があるのだが、 翌日、 私が実家に帰る予定があったためその場所を選んだ。 そこで軽く食事をすることになっている。 私は定時で仕事をあがるべく、 朝から必死で仕事をこなしていた。 そんな私を真紀子が遠巻きに見ている。 邪魔をしないようにしてくれているのだろう。 「キスできないかも…なんて言っときながら、 ちゃんと良い感じじゃない」 真紀子の冷やかしを背中に受けながら、 私は急いで職場を後にした。 カフェは私の会社から数ブロック離れたところにあった。 黒い壁に大きな窓、 そのすぐ近くには木製のカウンターが取り付けられている。 カウンターではスーツを着た人々が黙々とパソコンで仕事をしていた。 オフィス街にある都会的なカフェである。 私が店に着くと、 森村さんはまだ来ていないようだった。 カウンターとは別の窓側にある二人がけの席を探し、 座る。 紙のおしぼりと水を持ってきた店員にもう一人来てから注文すると告げた。 店員の女性は白いシャツに店の壁の色と同じ黒色のサロンをしめていた。 二〇代前半のまだ若い彼女は、 明るい色の髪を無造作に後ろでまとめ、 私の言葉に笑顔で頷きテーブルを離れた。
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