第一章 サクラ-2

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窓にはオレンジ色のかぼちゃや紫色の魔女の帽子をかたどった、 色紙が貼ってあった。 中央には大きく「ハロウィン」と英語で書かれている。 しかし、 少し違和感があって良く見てみると、 Lの文字が一つ足りなかった。 可愛らしい間違いに、 自然と笑みがこぼれる。 「何を笑ってるの?」 後ろから話しかけられ、 振り返ると、 森村さんがいた。 彼はチャコールグレーのスーツを着て右手にライトグレーのマフラーを持っている。 急いで来たのか、 少し頬が赤くなっていた。 「お疲れ様です」 私は窓の外を指さして 「ハロウィンの文字が一つ足りないんです」と、 言った。 森村さんがつられて窓を見る。 「本当だ。 Lが足りないね」 そうして、 二人で顔を見合せて笑った。 その後、 ホットコーヒーが運ばれてきた。 そのとき私たちはホットサンドをそれぞれ注文した。 ホットサンドには二種類あり、 私はハムとチーズが入ったものを、 森村さんはソーセージとピクルスの入ったチリソース味のものを頼んだ。 そのとき、 森村さんは一緒にミルクティーを注文した。 「森村さん、 紅茶がお好きなんですか?」 森村さんは何となく、 コーヒーの方が好きだと思っていた。 「うん。 コーヒーを飲むとお腹を下す体質でね。 いつもこういう場所では紅茶を頼むよ。 サクラさんはコーヒー派?」 「そうですね。 でも、 紙パックのレモンティーは好きです」 私が答えると、 森村さんは意外そうな顔で 「紙パックか、 懐かしいな。 俺も学生の頃、 よく飲んでたよ」と、 言った。
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